山渓遊びブログ 渓流釣りと採集

岐阜県から 山渓アウトドアライフ

婚姻色の渓魚

晩夏から秋に掛けて、渓魚(アマゴ)は繁殖行動(とその準備)に入ります。

成熟が進むと、オスは鼻曲がりになり、メスは尻鰭が伸び、またこの時に婚姻色が出て、外見が変わります。この変化はどれも、繁殖行動に必要なものです。

 

また一部個体に現れる成熟時の変化として「鱗の皮下埋没」が起きます。

体表の鱗の反射が消え、ヌメリ肌を呈す魚体。これは鮭科の他魚種でも起きる現象ですが、すべてのアマゴがそうなるのではありません。

この現象は私には謎で、これは釣り人の考察と言うより、魚類学の守備範囲かもと思っています。

 

 

私は色付いた成熟体を、「秋色」と呼んでいます。

色 が派手?に着くのは、オスの特徴。これはメスへのアピールと考えられています。同族の色覚に訴え、オスが自身が成熟個体である事を示しているのだそう。メスでも幾らか赤みの入った婚姻色になるものもありますが。

 

随分前に私は写真で、初めて秋色を観ました。

ネット画像でも、そんな魚を見ると、自分でも釣りたいと大興奮。当時はそれが秋の魚だとすら、知らなかったです。

 

「何だこの凄い魚は。何処にこんなのが居るのだ?」・・と、そこから始まり、初めて婚姻色の鼻曲がりを釣り上げた時は、大声で吠えてました。

 

しかしそこからが中々。

成熟体を見ることが出来るのは、秋の僅かな期間のみで、沢山のこの魚を釣ることが出来ず、私にはデータ化は難しい。

幾つか、釣り方の注意点、コツのようなものはあるのですが、「これだ!」と言えるほどのパターンは見付かっていません。

 

秋色の魚の釣りの考察に僅かながらの手応えを得るのに、私は13年掛かりました。その後何年も過ぎたのですが、完成形は見えないまま。一生完成しない気もします。

 

少し触れますと。

秋は繁殖行動が優先で、定位して採餌しない個体が多く、釣り難い。それでも通常通りに?ハリに乗ることもあります。

威嚇、反射、好奇心など、秋の魚が口を使うことには諸説あり、これは私には確かなことは分からない部分です。幾らか残る食性も含めて、「どれの場合もある」のではないかと。

釣り方は勿論ですが、私の考えでは、場所選びとタイミングを測ることが大事。

状況判断からの釣り方が、魚の「何か」と合う時に、出会いが叶うものと思います。

 

秋色に染まった渓魚は、本当に美しく格好良い。

繁殖行動に臨む魚の、独特な迫力を感じるんですね。禁漁前の時期のみに見える希少性、そして釣りの難しさ。

私は婚姻色の大型を釣りたくて、長くこの釣りを追ってきました。

 

 

しかし今さら言うのもですが。

成熟魚の多くは、繁殖と言う大仕事を終えたら命が尽きます。今は秋をそっとしておきたいような気持もあって、前ほどには目の色を変えなくなりました。

 

だったら釣らなければ良い、これはごもっとも。

しかし実際に釣ることで感じられるものが、間違いなくあります。

ペアリングしてる事が確認できたら、そこはもう手は出しません。

雌雄が並んで泳いていなくても、他のオスを排除しようと闘ってるオスが居たら、そこにはペアになるメスがすでに居ると考えて間違いないです。

 

釣れた場合は、元の流れにリリース。大型個体には、沢山の子孫を残して欲しい。

ある時に釣れたオスをリリースし、次の日に見に行ったら、同サイズのメスと並んで泳いでいた、と言うことがありました。浅瀬に居たので良く見えて、サイズ、色などから、まず同じ個体だろうと。

このことから、元気なままで手早く同じ場所に逃がせば、産卵直前でなければ大丈夫かもしれない、と私は考えています。

それでもペアと分かれば手を出さないのは、私が自分で決めたルールみたいなもの。

憧れていた秋色。

実際に手にしてみると、その迫力、存在感は画像や映像から感じるそれとは段違いでした。

この魚を釣り上げることで、その大切さを強く想います。

 

何尾出会っても、そのたびに一尾との出会いに大きく感動し、感謝する。

忘れられない思い出が、幾つも残り続けています。