山渓遊びブログ 渓流釣りと採集

岐阜県から 山渓アウトドアライフ

遡上魚の仔・シラメ

川で生まれ、海に降りて成長し、再び川に遡上し繁殖行動をするのが、サケ科の魚達。

海に降りるアマゴはサツキマスと呼ばれます。

現代ではダム等の人工物で下降と遡上が阻害され、海との行き来が出来ず、淡水域で大型化する個体群が居ます(湖沼型、陸封型サツキマス)。

また、サツキマス化でなく、アマゴのままの姿で大きな本流域で育つ個体群が居て(本流アマゴ)、こちらも大型になります。

 

サツキマス化するアマゴは、孵化してから約一年は生まれた河川で過ごし、その年の秋に下流に降ります(何故か居残るものも)。

ここでアマゴ型とサツキマス型が分かれ、更にアマゴ型の中でも上流域に残るもの、下流域に降りるものになっていく。

サツキマスの仔はシラメとなり、身体に変化が起こります。

体表が白銀になり、各ヒレの色が一般のアマゴと違い、胸鰭の黄色が失せ、背びれ先端にはツマグロと呼ばれる黒色が入ります。それと尾鰭の形がV字形に切れ込み、シャープに尖るのも特徴。

 

上流域のアマゴの体色が濃いのは保護色を纏うからで、対してシラメは海で過ごすので、目立つ体色を避けて白銀化すると考えられています。それぞれに外敵から逃れ易いからなんですね。

それとシラメの鱗は、海中生活をする為でもあります。ヒレの形状変化も、渓流と海、泳ぐ水域の違いからでしょう。

海と湖沼では水を含めて環境設定が違い、サツキマス型でも似た姿にして異なる性質をしています。私感では湖沼型はアマゴに近い。

ダム湖に降りて育つ群でも、パーマークが残ってヒレもアマゴ型のままのもの、サツキマスのように銀化しつつもパーマークが見えるもの、中間ぽい魚が色々居る。

海と繋がった水系にも、シラメ化しても海に行かないもの、海に行っても早く戻ってくるもの、これまた様々なようです。遡り降りを繰り返してる個体も居そうで、魚に発信機でも着けないと分かりませんが。

アマゴのままで降りた本流アマゴタイプは、銀化と言うより半銀化・薄銀化と呼ばれる姿です。

この画像は春の渓流域の魚。

一見すると通常のアマゴですが、色が薄く、角度を変えるとシラメのように白銀に見えます。しかしヒレ先が黒くなる「ツマグロ」は出ていませんし、胸鰭の色からもアマゴ型に近い姿。

渓流域のアマゴのようで、しかし居着き型よりも銀毛の強い個体は、この先どのように成長するだろう。

様々な姿を見せるアマゴは、小さいうちからすでに統一された姿ではないのですね。

 

アマゴの元はサツキマスで降下性があること。陸封の行動様式を獲得した種であること。

シラメにならずに下降するのは、氷河期以後に陸封されたアマゴが、海まで行かずに成長する為の行動。

どの遺伝が強く出ているのか、これらが交じり合って現代の環境に居ると考えると、この魚の追及はとても面白い。

同じ渓で同じ時期の、姿も性質も違うアマゴたちには、興味が尽きません。