山渓遊びブログ 渓流釣りと採集

岐阜県から 山渓アウトドアライフ

ブラウントラウトを考える

外来魚種の一つ、ブラウントラウト。私の住む岐阜県内でも、棲息河川が幾つかあります。

私がこの魚の存在を知ったのは渓流釣りを趣味にしてからですが、移入の歴史は一世紀以上にもなります。

 

この魚は公的扱いとして、環境省農林水産省から産業管理外来種に指定されています。

平成27年4月17日から岐阜県内水面漁場管理委員会支持により、内水面漁場管理委員会が承認した場合を除き、岐阜県内における本種の持ち出し及び移植は禁止されている。

 岐阜県水産研究所

水産分野における産業管理外来種について、外来生物法の規制はありませんが、生態系や農林水産業に被害を及ぼすおそれがあるため、外来種被害予防三原則「入れない、捨てない、拡げない」を守ることが必要です。

 

岐阜県では、漁業権の対象魚種としてブラウンは入っていません。と言うことは、渓流禁漁期でも、ブラウンの釣りはOKと法的にはなりそうです。実際には他魚種も釣れる可能性があるため、禁漁期間中は竿を出すのは難しいですが。

 

この魚には色々思うところがあり、今時点での考えをまとめてみました。

 

 

私は「外来魚をどう考えるか」の意見を他者と交換しても、議論はしない事にしています。

今までに実際に釣り、その河川を見て、自分なりに調べ、色々な方と意見交換してきました。移入の経緯、歴史、生態、そして現状等々。度々考えてきた話題なのですが、私は結論は見えないまま。

 

なので今はこの辺は「グレー」にしております。限定的容認派、と言うのでしょうか。

掛けたら獲りたい。好きではないけど、嫌いもしない。そんなところですね。

どんどん増える事が良いとは想いませんし、生息域の拡大はして欲しくないです。

 

ブラウンが釣れたら嬉しいかと問われたら、「微妙」が答え。

大型を仕留めたら、してやったり、とは感じます。だけど、どこか残念なような想いが同居するのですね。

 

 

私は以前はブラウンは嫌っていました。もっと言えば、駆除派でした。それは外来魚種に対するマイナスイメージからです。正直、今でもその感覚はあり、賛成派に転向したつもりはないです。

 

在来種への脅威ではないのか、生態系は大丈夫なのか、等々。少なからずの影響はありそうですし、在来の鱒類との生存競争は起きているはず。

長野県梓川では、現在の最有力種はブラウンだそうです。在来魚はどうしているでしょうか。

 

でもイメージや感情だけで見るのも違う気がする。

そこに生きる命に罪がある訳ではない。この一点に関しては他の外来魚も、国内産外来種と呼ばれる魚でも同じです。話の範囲が大きくなるので、今回はそちらには触れませんが。

 

私は釣り人故に、魚族を含めた自然環境に関心があります。釣りの対象としても、自然河川に生きる魚としても、外来のブラウンをどう考えるのか、難しいテーマです。

 

 

ブラウンは釣りの相手としては申し分ないです。大型個体が掛かれば手強く、興奮もします。

その感覚の程度は人によりけりじゃないかなと? 

 

渓流釣りで、例えばコイ科の大物が掛かっても私は嬉しくないですし、一緒にしたら怒られそうですが、ブラウンが掛かった時にはややそれに似た感覚があります。私が狙っているのは国産の渓流魚ですのでね。

 

コイ科と違うのは、ブラウンが鮭鱒類の一種である事です。渓流釣りが上手な人なら、同じ釣り方でブラウンをも沢山釣ることでしょう。その魚種が嫌いか、関心の対象外でなければ、デカくて強い魚を釣ってみたいと言う気持ちは、釣り人は持ち得ると思っています。

 

 

渓流釣りでは尺寸法から「尺上」と言う表現があり、一つの目標値にしている人は多いですよね。

ですがことブラウンに関しては、30㎝だと小粒の部類です。70㎝、80㎝と、あまりに大きく強くなる魚なので、一般の国産魚種とはサイズ感が合いません。(ニジマス他の話は省略)

その強さに惹かれて釣りをする人も居られ、こうした釣り人の志向と、大型ブラウンの魚食性の高さからの懸念などが相まって、その立ち位置が複雑化します。

 

 

釣りメーカーや釣具店、漁協等からも、ブラウンの釣獲情報は出ています。

近年の釣りメーカーから発売されている、河川での大物狙いの道具類は、ブラウンも含めた外来魚種を念頭(対象)にしたものは少なくないです。

同時に「ブラウントラウトの移植禁止」と書かれた漁協による立て看板もあり、ところによっては「駆除対象」との表記もあります。

 

ある漁協関係者に聞いたところ、「ブラウンは共存するしかないのではないか」とのことでした(容認?)。また別所では「釣れたらリリースしないで欲しい」と(駆除?)。

外来生物法が登場する前から今までも、外来種に対する人の関心と思惑は色んな交差をしていました。

 

 

先に書いたように、私は元はブラウンは嫌いでした。なのでブラウンが棲息すると言われる河川には、行った事が無かったです。

 

外来魚種が嫌いなら、その河川に行かないのは一つの選択だと想います。でも実際には私が釣りに行っても行かなくても、河川にも私自身にも何の変化もありません。人の好き嫌いに関係なく、ブラウンは放流された後、条件が揃った河川では繁殖しています。

これ以上に他河川に広げない事は出来ても、すでに河川で繁殖している魚を完全に駆除することは、よほどの小河川の限定水域でなければ、現実問題として不可能。ならば付き合い方を探すしかない、かなと。

 

今後、更にブラウンが増えて行くような状況になったら、またはその兆候が感じられたら。考え方を変えるかもしれません。

元居た欧州では何の問題もないブラウントラウトは、海を越えた此方では、時に嫌われ、駆除対象とされ、何だか哀しい魚だなと想います。