渓流釣りと採集は、意識的に似ています。
どこが?と言われそうですけども。
私が採集をしてる時の頭の働き方は、渓流釣りのそれに非常に近い。
時期と条件を考え、地域を選び、行った先で好場所を探し、次を予想し。効率よく獲物を探すための思考は、対象物が違っても殆ど同じ。
それに両者はフィールドが重なるので、自然観察がしたい私には好都合でもあります。
採集物と渓流釣りの関連性について
・植物類(山菜)
少し例示を。あくまで目安で、絶対ではないです。
残雪が残る時期、フキノトウやワサビが顔を出します。この時は水温気温共に低く、渓魚はまだ活発に泳がない個体が多い。
時期が進むとコゴミが出て、この頃は雪代期で、魚の動きが春めいてくる。本流域の魚が釣れ始めます。
ヤマウドが出始まると、遡上初期です。ヤマブドウの新芽が出る頃には遡上が本格化。遡上期はウグイの移動とも重なりますね。
「○○が芽吹いたら」は、「何処で」が大事。それで河川の「何処へ」。これらは季節進行で連動性がある(と思う)。
渓流・本流と言っても、上から下まで長大で、一斉に魚が動き出すのではないです。
植物の成長は地域・標高で差があって、里部で出始めても、奥山ではまだまだ真冬の状態だったりします。
また、気温が上がって出始めた新芽は、急な冷え込みがくると霜焼けしますので、気象変化の判断材料になります。
ここまでが春の山菜シーズンの大まかな流れ。
細かく刻んでいくなら、上記したもの達の合間にもっと沢山の芽吹きや開花があります。
芽吹きの季節以降、草木に着く昆虫類が増えて、この頃から渓魚は陸生昆虫を良く食べます。そうなると、追っているエサによっては、着き場所にも変化はあるでしょう。
この後は梅雨入り、梅雨明け、夏の高気温と、条件変化が起きていきます。夏の高気温の終わりごろから、ウワバミソウが実を付け、トリカブトの花が咲き、そして季節は秋に。
・菌類(キノコ)
秋のものだと思われがちですが、種類を問わなければ周年何かは発生します。でもやはり、発生量と種類が多いのは秋。
キノコは「子実体」と呼ばれる部分を指し、本体は「菌糸」です。
植物類と違うのは、生え始めた子実体はいつまでも残るのではなく、数日で姿を消すこと(硬質菌を除く)。タイミングが合わないと見付けられません。
キノコの中でも、長期間出るもの、ほんの一時のみ出るもの、様々です。また地域により、環境により、発生状況が違います。
条件変化に非常に敏感なので、発生の状態を観察すると、気温が上がったのか下がったのか、水分量が多い少ないとか、色んな状況が見えます。
真夏のキノコは気温上昇と降雨で出てきて、朝晩の気温が下がると朽ちて出なくなります。そして秋のキノコに代わっていく。種別にこうした傾向を知ると、その日その時の気温や天候で量れない、季節の移ろいを見付けられます。
水温が上がる・下がるは、季節により渓魚の動きを変えます。夏の高水温からと、春の低水温からでは、意味が違うのです。
気温の上下で地熱が変わることが、キノコの発生に影響して、地熱の変化は水温の上下に影響する、だろうと。
このような条件の変化は、渓魚の動きを予測するヒントになる。
それには同日に場所違いで幾つもの種を観た方が良く、標高を変えての観察も有効だと考えてます。ただ菌類は植物類より難解で、私ではまだ、僅かなヒントを探すのが精一杯。
時期的条件以外でも、植物類・菌類の観察をすると、地形が重要になってきます。
水や風の通り道が見えると、それは発生環境と大きく関係していますし、地表に見えない水道でも地下水が通っていて、河川の合流が見付けられたら、魚の着き場になることもあります。
また、釣りの最中に河原から見上げる山と、山から見下ろす渓流では、イメージがズレることは多いものです。こうした意識が向くことは、視点が複数化し、プラスだと感じます。
釣りのことだけに集中した方が、話が早い気もしますが、回りくどいような、こうした考察の構築は、とても面白いです。
冒頭のように、渓流釣りと採集は頭の使い方が似ているので、思考トレーニングの要素があると思っています。
山渓が好きで、採集は欠かせない楽しみ。ですがやはり私は釣り人で、一番の楽しみは渓魚との出会い。
その出会いのヒントが採集物から見付かると、その釣行は満足度がとても高いです。