対岸よりに流芯の通る淵。
深部を狙い、流れ込みから何度か通すと、来た!
この時手に持っていたのは、まだ使い慣れない釣り竿。
胴の張りが強めで、小さい魚が掛かっても、先端部しか曲がらない。
その竿が綺麗な弧を描いた。
拍子抜けのような、少し驚きな感覚。
ハリ掛かりした魚は、そこそこに重量感があるのに、こちらには全然余裕がある。
掛けてから短時間で、無事に捕れた。
銀毛のアマゴ。
筋肉質な体躯に、オスらしい尖った顔付き。
良い魚だ。出てくれてありがとう。
・・・・・・
この一尾と出会って、大袈裟でなく、私の釣りが変わりました。
竿・ライン・ハリのバランスが良いと、ヤリトリが格段に楽になると実感。それまでは釣り具を何となく選択していたのだと気付き、道具あっての技術であり、技術あっての道具だと、強く認識させて貰えました。
ある時を境に、自身が急変することはそうそう無い。ですが積み重ねた経験が、見える形になってくる「時」はある。この釣行では、成功体験と言う形で、自身の進歩を見ることが出来たように思います。
これ以後、魚が掛かってからの焦りが大幅減。自分でも不思議なほどです。
渓流釣りにおいては、多くの魚と対峙することで技術が身に着きます。中でも大型魚とのヤリトリは、小型魚を数釣っても、中々上達が難しい。重く、速く、強い渓流魚たちとの出会いは、それが難しいものであるほど、向上の契機になる。そしてその数が重なることで反復し、自身の力になっていきます。
今も手強く、緊張を感じる魚はいます。
そのたびに捕れる喜び、捕れなかった悔しさを感じ、次の釣りへのモチベーションが上がる。
この時の銀毛アマゴは、この先も忘れない、思い出の一幕になっています。