山渓遊びブログ 渓流釣りと採集

岐阜県から 山渓アウトドアライフ

アマゴのサイズ差と生息環境

一般的に河川の上流域は渓魚の棲息が多く、下流域ほど少ない。

棲息密度が高い場所には小型が多く、低い場所には大型が育ちやすい。これは水量と生存競争の相手の数を考えれば当然かなと。

渓流魚は冷水性ですから、上流域の方が居心地が良さそうですが、冬の水は冷た過ぎるようですし、あまりに上流の沢では水量が足りず、これも棲息には適してません。下流域は水量が多く、エサが豊富ですが、夏場が温過ぎる。

 

河川のどの場所も魚にはメリット・デメリットがあって、個体としても種としても、それぞれの場所に棲む理由があるのですね。

 

各所で育ったアマゴたちは、産卵期までに上流域を目指しますが、それは生まれる仔魚たちの生育に都合が良いから。本能ですね。

 

渓流の産卵場所で孵化した仔魚はその後、姿と行動が分かれていきます。

かなり大まかな区分けで、生まれた水域からあまり移動しない「居着き型」と、下流に降りて成長し、上流域に戻る「移動(遡上)型」。

 

居着き型はパーマークがあり、魚体の色合いが濃い。これは保護色の意味があると考えられています。平均して小型が多い。

移動型のアマゴは1箇所の色に染まらず、体色が薄く体表の鱗の反射が目立ちます(銀化or薄銀化)。こちらは大型化します。

 

卵から仔魚が生まれて泳ぎ出したとき、そこに自分より大きな魚が居ると、良い流れに入れず、エサが十分に摂れません。大きな魚を避けた場所でエサを探しますが、それでは成長しにくい。

このときに、銀毛(+薄銀毛)個体はライバルが少ない下流に移動し、そうでない魚が居残りします。(両者が綺麗に分かれるのではなく、短い距離を行き来するもの、長い距離を移動するもの、色々なタイプが居ます。)

渓流域で主流に居て、エサを多く食べている良型の居着き魚は実は、昨年は流れの脇で少ないエサを摂っていた小さな魚が大半。

この魚を避けて下流に降りて成長した個体は、遡上期には居着き魚より大きくなっている事が多いです。

 

大型個体は子孫を沢山残すが繁殖機会は一回で、小型個体は二回。小型は一年目でも繁殖行動に参加するもの、三年目に参加するものも。

産卵のために遡上する個体の多くは2年魚。居着き魚の良型には、下流育ちには少ない3年魚が多く居ます。

遡上魚に比して居着き魚は、プラス一年で大型に育つことから、いかに下流域の環境が生育に好都合かが伺えます。しかし水温上昇と、稚魚の定着に難があり。

生息環境が分かれ、成熟体の年齢が分散することで、種を繋ぎ続ける。このことから、小型魚の存在意義は小さくないとも考えられます。 産卵期に災害が起きる等しても、親魚が生きていれば、繁殖のチャンスは残ります。

繁殖機会と年数の分散は、渓流は棲息が厳しい環境である故かもしれません。

源流の隔絶水域では下流からの大型魚遡上がないので、小型魚が複数回産卵するのは種の保全には適っているのですね。

 

私は釣り人として、相手となる魚の生態に関心があります。

出会えたのがどんな魚だったのか、そこを考える事で釣りの意義が加わっていくんですね。あくまで私の個人的なものですが。

 

釣りは「狙い通り」に結果が出れば、満足感が上がるもの。

相手の生活史を知り、どの時期、どのタイミングで、どんな釣り方がと、パズルを解いて行くような過程が、とても面白いと想っています。