アマゴ域で渓流釣りをしている私は、「サツキマスの仔」と言われるシラメには、行動・性質に興味をそそられます。
パーマークがクッキリと浮かぶ、通常?のアマゴと、白銀のシラメが同種の魚だとは、渓流釣りをしない人からは思われないかも知れません。でもこの両者は間違いなく同じ魚。
何がこの両者の姿を分ける要因なのか。そこは魚類学に任せるとして。
シラメに関する論説は多々出ていて、私も過去幾つも目を通しました。
私は中部圏のアマゴ域で、実際に釣ってみた体感と、世の論説を合わせて、渓流釣りでこの魚に出会う際、毎回色々な事を考えます。
シラメの中にも、パーマークが消失した白銀のもの、角度を変えるとパーが見えるもの、その濃淡にも個体差があります。
一説には「本来のシラメは完全な白銀で、パーマークが残るものは”銀毛アマゴ”でシラメではない」のだとか。←これに関しては、私は未だスッキリ落ちていません。「限りなく白銀、でも微妙」とか、「パーマークはあるが、角度によっては銀鱗」みたいな、どうとも見える個体が居ますのでね。
アマゴと比して、シラメは背鰭先端がツマグロと呼ばれ黒くなり、胸鰭の黄色と尾鰭の橙色が薄まり、尾鰭が切れ込んだシャープな形に変ります。ところがアマゴのような特徴をヒレに残した銀毛が居て、完全に区分するのが難しい。
また産卵期になると、アマゴ型とシラメ型では婚姻色の出方が違います。
銀毛のアマゴは、早く大きくなりやすいみたいです。
何故なのかと思ってたのですが「シラメの成長が早いのではなく、成長が早いアマゴが銀毛化し易い」との説を知り、これに一票入れてます。
下降するアマゴは豊富な水量と餌のある水域で大きく成長する。しかしその水域では水温が高くなりやすい事、生まれた稚魚の成育には不適な環境であること等から、上流域で生まれ、産卵期前には元居た渓流に戻ってくる。
サツキマスになる準備として、白銀の魚体に変化するアマゴ。以下、私の考察。
河川上流部から下流域、果ては海へと向かう下降は、秋に始まります。
これには個体差があり、早い時期に下流に降りるもの、中々降りて行かないものが居るらしい。シラメ化する時期にも個体差がありそう。秋以降は禁漁期で、実際に釣って観察できませんけどね。
秋に下降しないと冬が来て、川魚は淵底などで静かになる。下降準備をしたシラメも同様で、翌春に渓流域に居るシラメは、前年秋に下降しなかった個体だろうと。
シラメ化が遅れたのか、冬が来てしまったのか、それは不明。
春に出会うシラメはやや小振りで、小型~尺くらいまでのサイズが多い(稀に大型も)。
中小型のシラメたちは、梅雨頃にはほぼ姿が見えなくなります。多くは遅れてでも下流に降りているのだろう、と想像。おそらく下降するのは、降雨の増水時です。
遅れて下降するシラメの代わりに、初夏頃には前年に下降したシラメの遡上が始まります。こちらは河川残留した個体より、一回りも二回りもサイズが大き目。タイミングとしては、ユキシロが落ち着き始め、地熱が溜まり、水温が安定する頃。初夏から梅雨時期頃までは、残留型と遡上型のシラメが河川内に混在している状況。
遡上は一斉に始まるのでなく、個体差で初夏から順々に起こります。下降と遡上のタイミングの違いは成長過程にも現れるはず。年越しの下降魚がいつ戻ってくるのか、その辺は分かりませんが。産卵時期にも影響はありそうで、このズレにも意味があるのだろうと考えています。
遡上時期や成長と関係があるのか、鱗の細やかさ、剥がれやすさ等々、体表に差異があるのも興味深いところ。
随分前の事、初めて長良川のシラメを釣った時は、その美しさに見惚れました。パーマークの綺麗に並んだアマゴとはまた違う、自然の魚の姿。
ダム等があり海まで行けなくても、シラメ化するアマゴは各所に居ます。これらは遡上・下降の阻害物が無ければ海に向かう魚かも知れないですが、現代の河川環境で適応した渓魚の一形態なのだろうと。
私は釣果も大事ですが、観察対象としての魚の追跡にも強い好奇心を持って臨んでいます。