冬は雪と氷に覆われた白銀の世界から、春に雪が解け、緑眩しい初夏になり、更に緑濃い夏が来て、秋に紅葉した後は植物の葉が落ち、そしてまた冬が来る。
と、ザックリ書くと、お正月からの一年の日本の四季はこんな感じ。ですが私の住む地域周辺では積雪が少ないので、寒くて緑少ない冬になっています。そこへいくと渓流域は四季の彩の変化が分かり易く、どの季節もそれぞれに美しい。
渓流釣りでは、対象魚の四季の彩が見られます。禁漁期は釣ることが叶いませんが、2月から9月までの8ヶ月間、季節の進行とともに渓魚達は色合いを変えていきます。
冬は前年の産卵期以後、くすんだ体色になり、これは「サビ」と言われます。
融雪の時期にサビが抜けて、白っぽく、美しさが際立ってきて。
夏を迎える頃には体色と肌の艶感が増し。
秋になると、婚姻色が出てきます。
この色の残りと、冬の低水温時に変化した体色がサビになるのかなと。
渓流魚には移動性の高い個体が居て、生まれた場所から下降し、成長後に遡上しています。
私の住む中部圏では秋頃から下降が始まるようです(秋以降は禁漁で追跡できず)。下降・遡上の時期には地域差があるようですが、秋の産卵時期までには上流域に遡上して戻ってくることは、どの個体も同じ。
このタイプは魚体が白銀で、写真では季節ごとの色合いをあまり纏わないようにも見えるのですが、鱗の状態や艶感に個体ごと、時期ごとに差異があります。この個体差は、色合いの変化が見た目に分かり易い居着き型と同じくで、決して小さくないです。
移動型の魚が、何を移動の契機にしているのか、私的には結構謎。
傾向として間違いないなと感じるのは、季節の進行による条件変化。例として、水温の上昇・低下や、水量の増減などです。こうして居場所を変える魚もやはり、季節ごとに姿を変え、その彩を見せてくれる。
また、地域による個体の差異が大きいのも渓流魚の特徴であり、魅力の一つ。
水質や地質、摂っている餌の種類などもですし、同じ日付け・河川でも標高差で季節進行に違いがあり、それらの要素が影響してると考えられます。加えて保護色の意味からか、居場所が浅場か深場かで体色に違いが出ます。
同地域の同種の魚でも、それぞれが個性的な色彩を帯びていて、一尾として同じ魚が居ないのが渓流魚の面白いところ。
魚の生まれ育ちに加え、季節ごとに色合いが変わる生態。
私感では、最もその変化が大きいのが秋。婚姻色を纏う時期になると、魚体の持つ雰囲気が豹変します。
我々人間は暦を一つの基準にして生活します。対し、魚達の行動は四季の条件変化により起こっていて、同時に魚体の彩もまた変わって行く。
四季折々、どの魚体にもその色彩には意味があり、それぞれの季節の景色と同様に、いずれも美しい。解禁期間中にその変化を追う事も、渓流釣りで同魚種を釣り続ける理由と思っています。