⽇本などの温帯地域では、森林から河川に流⼊する陸⽣無脊椎動物(以下、陸⽣動物)が、受け⼿となるサケ科⿂類の重要な餌となり、それらの成⻑や繁殖開始年齢を変化させます。陸⽣動物が流⼊する季節は、河畔林の植⽣によって変化し、例えば落葉広葉樹に囲まれた河川では、春の展葉に伴って陸⽣動物の流⼊が増え、サケ科⿂類の季節的な成⻑期間の初期(初夏)にそれらの成⻑を後押しします。⼀⽅で、針葉樹に覆われた河川では、サケ科⿂類の成⻑期間の後半(初秋)に、展葉の影響を受けにくい地表徘徊性の陸⽣動物の流⼊量が増えます。また、伐採や植林など、過度な森林利⽤が⾒られる河川では、系 外 資 源 の流⼊量そのものが⼤きく減少することも知られています。
本研究は、「春の展葉とともに森で育った陸⽣動物が川に流⼊し、川に暮らす⿂の季節的な成⻑を促進する」という、⾃然本来の森と川のつながりが、⿂の多様な⽣き⽅の維持に貢献していることを⼤規模な野外操作実験で初めて実証したものです。⾃然⽣態系の多くは、本来、季節的に⽣じる系外資源流を介して他の⽣態系とつながっていることを考えると、本研究の成果は、野⽣⽣物の⽣き⽅の多様性が維持される仕組みの⼀つを紐解いたと⾔えます。
感覚的なもので、「何となく、自然の中ではこんな事が起きてるのではないか」と考えてたことが、実証された形だと思いました。
>森林から河川に流⼊する陸⽣無脊椎動物(以下、陸⽣動物)が、受け⼿となるサケ科⿂類の重要な餌となり、それらの成⻑や繁殖開始年齢を変化させます。
私が特に注目したのはここ。
今回の記事は、特に上流域に棲息するアマゴ達を対象にしたものと思います。私自身、一釣り人の観察の範囲で、アマゴの繁殖機会の分散には関心を寄せてきました。
実際のフィールドでは、上流域に居着く魚だけでなく、下流へ降り、成長して遡上するタイプが居ます。その生活史は、食性も含めて居着きタイプとは行動が異なっていて、故に成長の仕方も、繁殖機会やその時期も違ったものになっている、と私は理解しています。
「生活史の多様性」とは、ある意味で「種としての行動の不安定さ」に繋がる気がします。成長過程の変化があり、つまり繁殖時期の変化にも繋がっているのは、アマゴが一斉に成長せず、一斉に繁殖行動を取らない方が、種としての保全に叶うと考えて良いのかなと。
生態の考察が紐解かれていく、それを情報として取り込み、実釣で出会う魚の観察に当てて行くのも、非常に面白いと私は思っています。